「星空を見ながらフレンチディナーをいただく」というなんともロマンチックなツアーに参加してきました。キッチンカーが牧場に出動し、有名シェフによる地元食材を使った本格フレンチを野外で楽しむという贅沢な企画です。
このキッチンカーツアーは、これまで「果樹園の中で桃フルコース」とか「野菜畑で採れたて野菜の朝ご飯」などを実施していて、私のような食いしん坊のツボをぐっと押さえた企画で注目をしていたのですが、なかなか日程が合わず、今回は満を持しての参加となりました。
(牧場での星空レストランのセッティング。孫の手トラベルFacebookページより)
主催は郡山市の「孫の手トラベル」というちょっと変わった名前のツアー会社。母体がタクシー会社のため、郡山市在住の参加者なら家までタクシーで送迎してくれるという、文字通り「孫の手」のようなサービスが売り。福島市から参加の私はJR郡山駅に集合し、そこからタクシーで出発地である郡山観光タクシー本社まで行き、ツアーバスに乗り換えていざ出発。
目的地は福島県東白川郡鮫川村。福島県の南端に位置し、すぐ隣が茨城県という県境の村です。阿武隈高原から太平洋に流れる鮫川は、昔はウナギも捕れたという清流で、上流の強滝(こわだき)付近は、知る人ぞ知る紅葉の名所とのこと。
同じ福島県に住んでいながら、鮫川村はこれが初訪問。キッチンカーが待ち受ける「鹿角平観光牧場」が天体観測の聖地と呼ばれる場所であることもこのツアーで初めて知りました。
さて、結論から言うと、この日の「星空の見える牧場レストラン」は幻となりました。
朝から降り続けていたどしゃぶりの雨が足場をぐちゃぐちゃにし、到着直前にこそ晴れ間は見えたものの乾くのには間に合わず、ロケーションの移動を余儀なくされたのです。
とても残念でしたが、変更先の「ほっとはうす・さめがわ」という宿泊施設のテラスは想像以上に素敵なところで、雨をしのぎつつほどよいアウトドア感も味わえて、結果としては○。まるでヨーロッパのプチホテルのような非日常の空間が生まれていました。
キャンドルやたき火などの照明効果やテーブルセッティングなどもオシャレでテンションが上がります。1日のみのレストランにしておくのはもったいないようないい雰囲気です。
インスタ映えするシーンばかりで皆さん写真撮りまくり。私はと言えば、スマホを家に忘れるという痛恨のミスでリアルタイムの投稿ならず。
キッチンカーのわきにはバーコーナーがあり、各種飲み物をキャッシュオンにて。
参加者は福島県内のほか首都圏からグループやご夫婦、親子など。
さて、お料理ですが、メニューはこんな感じです。
食大学の鹿野正道シェフによる野菜、米、大豆、羊、地鶏などの鮫川産の食材を中心に使った料理は美味しいだけでなく、いずれも「いまここで食べる価値」を感じさせてくれるもの。つい気分が上がり、ワインも乾杯の泡から白、赤とどんどん進んでいきます。
料理はしっかり撮ろうと思っていたのですが、コースが進むごとに暗くなって、さらに酔いも回ってピンぼけばかり(泣)。
ということで写真の出来は悪いですが、個人的に一番のお気に入りだったのは、鮫川産の羊肉のロースト。鮫川の羊は主に首都圏のフレンチやイタリアンレストランに卸しているとのこと。上に載っているのが脂身の部分ですが、さくっとした歯ごたえのある食感は牛の脂身とは全く違い、新鮮な驚きでした。
羊肉の生産者の根本吉郎さん(左)。製造業の仕事から羊を育てるようになった経緯など、羊について語るお話ぶりで誠実さが伝わってきます。こんなふうに生産者やシェフから直接話を聞きながら食事をいただけるのも、キッチンカーの魅力のひとつです。(右は孫の手トラベル山口社長)
生バンドはなんと鮫川村役場の皆さん。この日のために一生懸命練習されたそうです。村をあげて歓待してくれている感じがすごくうれしい。演奏もうまくて、個人的に好きな曲ばかりで楽しめました。思わず踊り出す人も。
夜も更けて、ワインのボトルも次々に空いていき、最後はチーズのアソートまで。
そしてメニューにないサービス。鹿野シェフが目の前でつくってくれるオムレツ(トリュフ入り!)です。つくる様子をずっと見ていましたが、さすが本職のオムレツは見事の一言。(もちろん、この大きさは一人分ではなく数名でシェアしました)
参加者の共通項は、言うまでもなく「食べることが大好き」ということ。初めてお会いする方とも、「食」という共通の趣味で話題は尽きず、あっという間に帰る時間となりました。
最後にこのツアーの価格ですが、日帰りコースは13,800円。内容がよくわからないまま勢いで申し込んだものの、振り込む段になって正直ちょっと高いなと思ったのですが、食事の内容、演出、サービススタッフの数の多さ、交通費など考えればむしろ安すぎるぐらいです。
「参加してよかった」と心から思えた初めてのキッチンカー体験。単に美味しいものを食べるというだけでなく、食を通じて土地とつながり、人とつながることが体感できた、一期一会の贅沢な時間でした。
このキッチンカーツアーに向いている人は、有名レストランや高級食材というだけではもはや心動かず、もうちょっと違う「食体験」をしてみたい、という方。また、生産地の新鮮な食材を郷土料理ではなく洗練された料理で楽しみたい、という方はまさにドンピシャです。
次回のキッチンカーは9月16日。猪苗代湖畔でグランピング(ラグジュアリーキャンピング)をテーマに行うそうです。